心不全多職種支援チーム(ハートケアチーム)

 心不全では心臓の機能が低下して全身の臓器の機能不全が出現し、また、血液の流れの停滞により全身のむくみ(浮腫)や肺うっ血・肺水腫による呼吸困難が出現します。また、心不全は急な悪化(急性増悪)をくり返しながら心不全の病期(ステージ)が進行し、ついには終末期を迎えることになります。したがって、急性増悪をおこさないこと、急性増悪の状態には早期に治療を開始して直ちに改善を図ることが大切です。

 このように、急性増悪をくり返さないことが重要ですが、心不全悪化の因子として、①内服中断、②通院中断、③塩分・水分過多、④過労、感染症の合併、⑤血圧上昇、⑥虚血の悪化(狭心症、心筋梗塞)、⑦不整脈の悪化などが、また、心不全の予後不良の因子として①腎不全②貧血、③抑うつ、④社会的サポートがないこと、⑤低栄養などがあげられています。これらの因子の多くが、「心不全のケア」にかかわる問題で、心不全をよりよ<診療するためには、患者さん本人とご家族とともに「チーム医療」として取り組んでゆくことが必要です。最新のガイドラインでも「包括的心臓リハビリテーション」や「多職種チームによる疾病管理プログラム」として、心不全治療に必要不可欠な要素として位置付けられています。

 松江市立病院の循環器内科では、患者さんのより良いLIFE(生命と人生)のために、院内外の多職種(医師,看護師,薬剤師,理学療法士,管理栄養士,医療ソーシャルワーカー,臨床検査技師、臨床工学技士、診療放射線技師など)とのチーム医療、心臓血管外科や心移植治療が可能な施設との連携、地域の「かかりつけ医」やケアマネージャーなど在宅に関わるスタッフとの連携をすすめ、ともに「ハートケアチーム」として心不全の治療とケアをすすめていきます。

 

当院の緩和ケアチームと連携して、心不全患者さんに緩和ケアを提供します

 心不全の予後予測はとても難しく、進行した心不全の患者さんでも積極的な治療が奏功して数年にわたり自宅での生活が謳歌できることもまれではありません。心不全が増悪し肺水腫が出現すると呼吸困難に伴って生きる希望を失うこともあります。一方、重篤な状態から回復した体験は積極的な治療に対する希望をもたらします。このように患者さんの気持ちは治療の経過でしばしば変化します。

 進行した心不全の患者さんでは、積極的な治療が症状の改善をもたらす可能性があり、がん患者さんの終末期医療とは違った観点でとらえる必要があります。進行していく心不全患者さんへの治療では緩和ケアの重要性が指摘されています。もちろん、心不全に対して最大限の治療が行われていることが前提です。また、最新の知見にもとづいて有効な治療法を検討し、同時にケアを行っていく必要があります。

 H28年度から緩和ケアはがん患者さんだけではなく、心不全の患者さんにも保険適応となりました。当院では、がん患者さんへの緩和ケアの経験が豊富な「緩和ケアチーム」と協力して、心不全の治療と緩和ケアをシームレスに提供していきます。