PET/CTについて

PET/CTのはなし

病気によっては、医師による診察のみではすべての病状がわからないことがあります。そのために、様々な検査がおこなわれていることは、皆さんもご承知のことでしょう。脳血管障害、虚血性心疾患、がん等の三大成人病においては、今や画像診断なしには診療が成り立ちません。最近のCTやMRI、超音波検査でがんの主だった病巣は診断できますが、その周りのリンパ節への広がりや離れた臓器への広がりについては、診断が難しい場合もあります。例えば、腫大したリンパ節があれば病気の疑いは強くなりますが、通常の大きさのリンパ節の中にがん細胞があるのかないのか、CTやMRIでは診断できないことがあります。

PET/CTは、FDG(18F-FDG(フルオロデオキシブルコース))という特別な薬剤を使用して、がん細胞の集団を早期に発見する検査です(図1)。このFDGという薬は、ブドウ糖にきわめて似た構造をしています(図2)。一般にがん細胞は、正常な細胞の3~8倍多くのブドウ糖を必要として取り込みます。そのため、FDGを投与すると、あたかもブドウ糖であるかの様な顔をしてがん細胞に取り込まれます。しかし、細胞に入ったFDGは、ブドウ糖ではないので次の代謝ステップに移行できませんし、細胞外にも排出できません。どんどん細胞にたまっていきます。その状態で撮影すると、がん病巣が明るく写ります(図3)。一度の検査で全身の写真が撮れることも利点です。

頸部の5.5mmという正常な大きさのリンパ節内のがん細胞が、PET/CT画像では明るく描出されている。

図1:頸部の5.5mmという正常な大きさのリンパ節内のがん細胞が、PET/CT画像では明るく描出されている。

FDGとブドウ糖の違いは一部のみです。

図2:FDGとブドウ糖の違いは一部のみです。

がん細胞が、PET/CTで「光る」理由。

図3:がん細胞が、PET/CTで「光る」理由。

例えば、乳がんでは病気の広がり診断の正確性が、従来の検査法よりもプラス10~40%向上すると報告されています。がんの治療後でも、がんが残っているかどうかの診断に有益です。腫大したリンパ節が最初に発見された場合でも、どこからのがんであるか調べるのに有用です。
この度松江市立病院では最新式のPET/CT装置を導入しました。呼吸同期法といって、呼吸の動きに合わせてPETの画像とCTの画像を融合することも可能です(図4)。肺腫瘍が、胸膜や胸壁という周辺臓器に単に接触して
いるだけなのか、密着して食い込んでいるのかということも診断できるであろうと期待しています。
PET/CTは、がん診療拠点病院に必須の診断装置です。正確な病状の把握なくして的確な治療は成り立ちません。松江医療圏全体の医療水準向上に大きく寄与するものと信じています。

最新技術の呼吸同期法。PETCT呼吸同期への進化

図4:最新技術の呼吸同期法。
上段は、呼吸同期していない従来のPETで、集積の形が変形しています。
中段は、呼吸同期PETで、集積の形は的確ですが、CTの病巣と異なる位置に集積しています。
下段は、呼吸同期PET/CTで、集積も病巣の位置も正確です。