3T(テスラ)-MRIについて

3T(テスラ)-MRIのご紹介【精緻な画像情報の世界】

平成26年11月から3T(テスラ)-MRI装置が稼動しはじめました(図1)。「テスラ」とは磁場強度の単位、平たく言えば磁石の強さの単位です。MRIは磁気共鳴画像診断装置の略称で、磁場と電波の反応を応用して人体内部を画像化する装置です。

印象深い症例をご紹介し、精緻な画像がもたらす医学的情報の素晴らしさをお伝えします。

図1:当院の3T-MRI装置の外観図

図1:LEDの照明で明るい室内となっています。装置内の空間も広く余裕があり、快適性が増しています。図は品質管理の最中の写真で、装置内には計測機器が設置されています。

胆のう疾患

CTが頭部の画像診断の装置として登場した様に、MRIも頭部の画像診断からはじまりました。特に3T-MRIは、保険適用され臨床現場で使われはじめても、数年は頭部専用でした。しかし現在は、腹部の画像撮影の画質も向上し、胆管や膵管も良好に抽出できるようになりました。
この症例はCTで胆のう壁の肥厚があり精査となりました。図2-Aでは、胆のうのくびれ部分の肥厚した壁内に微小のう胞が描出できたことにより良性の胆のう腺筋症と診断できます。胆管と膵管が別々に乳頭に開口している様子が分かります。胆のう管が頭側に描出されています。
図2-Bの胆汁・膵液を強調したMRCPという撮像では、胆のう管のらせん状の様子まで明瞭に見え、右肝管への合流異常が確認できました。

図2胆のう腺筋症と胆のう管の合流異常

図2:胆のう腺筋症と胆のう管の合流異常
2-A:胆管の角度に合わせた斜め冠状断のT2強調画像です。
Y字型に走行する胆管が高信号域として明瞭に描出されています。その下方に膵管もほぼ水平に走行している様が確認できます。胆管と膵管は別々に開口しています(-)胆のうは途中で強いくびれをしていますが、その部分に微細なのう胞が集っている様子が観察できます(→)。
2-B:MRCPという、水を強調した撮像方法です。図2-Aでは分からなかった胆のう管と肝管の連続部位がこの図では明瞭です。通常は、字の下の縦棒に合流しますが、この症例ではY字の上の一辺に合流しています。胆のう切除される時は、この様な小奇形も重要な術前情報となります。

乳腺腫瘍

乳腺の専用コイルも進歩した器具です。両方の乳腺の細部まで見えるように、皮下脂肪をくまなく無信号にしています(図3-A、B)。
乳腺の診断では造影剤注射直後から数回撮像し、病変がどのタイミングで高信号になるのか、その後も信号は高いのか、低下するのかという点も重要な診断のポイントです。1回あたりの撮像が早く綺麗であることで、病変の内部の構造と、病変の個数、病変の連続性の有無が分かります。
これらから総合判断して診断しています。病巣の広がりが詳細に分かりますので、治療方針にも生かされます。

 

図3乳腺病変

図3:乳腺病変
3-A:乳腺の造影開始90秒後脂肪抑制T1強調画像。右乳腺内に中小の結節影が高信号域として散在しています。3-B:乳腺の造影開始180秒後脂肪抑制T1強調画像。図3-Aと比較して、結節影の信号が僅かに低下している一方で、結節と結節の間に線状の高信号が確認
できます。乳腺の病巣は、造影剤静注後繰り返し撮像することにより、濃染する変化のパターンで、良性悪性の判断の参考にしています。この症例は多発性の病巣であることがわかり、術式が決められました。

 

膝関節

四肢の関節外傷も、今ではMRIの主要な対象です。関節は構造物が小さいだけでなく独特の形状をしているため、複数の方向で同じ損傷があることを確認することが肝要です。1方向のみでは凹んだ形の一部と区別つきません(図4-A、B)。その為非常に薄いスライスで撮らないと、対象物の部分的な裂傷は、周りの組織と平均化してしまいます。
今回は提示していませんが、前十字靭帯の内側の線維束AMBと外側の線維束PLBも容易に区別できるようになりました。

図4膝関節外傷

図4:膝関節外傷
4-A:右膝冠状断脂肪切削T2強調画像。向かって右の半月板は損傷されていない内側半月板で、均一な低信号の扁平な二等辺三角形です。
向かって左の外側半月板は肥厚し、中心部が関節液と同じ程度高信号です。この高信号により半月板の上面と下面は数カ所で不連続です。
外側半月板は脛骨からも離れています。形も波打つ形となり、その下面、脛骨外側平面との間隙このう胞が形成されています。

4-B:右膝外側半月板付近の矢状断、プロトン強調画像。向かって左が前方です。
半月板の後部は低信号ですが、前方は内部に高信号域があり、この方向でも半月板の上面の一部断裂が確認できます。

下垂体腺腫

下垂体の微小腫瘍も1.5T-MRIでは診断困難であった病変です。下垂体を薄いスライスで繰返し撮ることにより、
微小病変も正常下垂体に紛れることなく判断できるようになりました(図5-A,B)。

図5下垂体腺腫

図5:下垂体腺腫
5-A:下垂体造影早期冠状断。乳汁分泌とプロラクチン高値であった症例です。下垂体の下部に微細な低信号域があります。
5-B:下垂体造影冠状断、5-Aより2分経過しています。下垂体の下面の低信号域は、この撮影でも確認できるので、病巣と判断できます。

脊椎

この症例は1.5T-MRIで異常が発見され(図6-A)、3T-MRIで精査しました(図6-B)。左膝の痛みの確認です。麻痺症状はありません。
馬尾の合間に点状陰影が数個あり、冠状断ではさらに多数確認でき精査しました。3T-MRIで再検査し病変がより確実になりました。造影後の画像では、離れた点々ではなく連続し蛇行した線であると確認されたので動静脈瘻を疑った症例です。

図6腰椎の病巣

図6:腰椎の病巣
6-A:1.5T-MRI腰椎T2強調画像矢状断腰椎の検査です。馬尾神経の間隙に微細な粒状影が上下に並んでいます。
6-B:同一症例の3T-MRIT2強調画像矢状断。1.5T-MRIで発見された粒状影が、明瞭に確認できます。造影剤投与後濃染され、蛇行しながら走行する静脈であることが確認できました。硬膜動静脈瘻を疑いま
した。