栄養相談室

がんの治療を行う上で、患者の体力維持、栄養状態の維持はとても重要です。しかし、化学療法や放射線療法を行うといろいろな副作用がでることがあります。特に食事に関する副作用は患者や料理を担当する家族にとって、時に深刻な問題になることが少なくありません。

「食べること」は日々の生活に欠かすことができないため、食事の悩みは生活の質に大きく影響します。

『栄養相談室』では、悪心・嘔吐、食欲不振、口内炎、味覚障害などさまざまな副作用によって、「食べること」がいつものようにできなくなったとき、あるいは、栄養のとり方に不安があるとき、管理栄養士が、患者や家族とお話させていただきます。

患者の生活スタイルや嗜好、食習慣などを考慮し、個々の副作用や症状に応じた調理上の工夫、食材の選び方、食べ方など対応策を提案します。

食事に対する不安や苦痛が少しでも軽減し、栄養状態を保って治療にむかえるよう継続的に関わらせていただけたらと考えています。

治療中の患者だけでなく、手術の影響や病状の進行により食欲不振を招いた患者や家族の相談も対応いたします。

お問い合わせは、栄養管理部へお尋ねください。

 

相談室の様子

患者さんとご家族へ「栄養のとり方と食事のヒント」

「食べること」は、生命維持のため、生活の質の維持のために大切なことです。それとともに多くの人にとって大きな楽しみです。しかし、病気の影響や、治療による副作用によって「食べること」が難しくなることがあります。
病気を治療するうえで栄養状態の維持はとても重要です。「食べること」を妨げる様々な症状が出たとき、調理方法や食材選び、盛付け方の工夫、食べ方の調整をすることで、食事量を保つことができます。
「食事のヒント」を参考に、栄養状態・体力を維持し、「食べること」を楽しみましょう。

このページのPDF版はこちらから→「栄養のとり方と食事のヒント」(PDF:678KB)」

食べることを妨げる症状

  • 食欲不振
  • ムカムカする
  • 口内炎
  • 飲みこみにくい
  • 下痢・便秘
  • 味覚・嗅覚変化

これらの症状は人それぞれ程度が異なります。自分に合った食事のとり方を見つけましょう。
口の中が乾燥していたり、汚れていると、おいしく食べられないことがあります。
口の中を清潔に保つことも大切です。

食欲不振・はき気がある時

  • 少量でも栄養価の高いものを選ぶ。(卵、乳製品、豆腐など)
  • 少量ずつ盛付けて品数を多くする。又は食事回数を増やす。(盛付け量が多いと見ただけで負担に感じることがあります)
  • 主食を変えてみる。(めん、パン、酢飯、炊き込みご飯、丼など)
  • 自分にあった味付けのものをとりいれる。(酢の物、漬物など)

口内炎がある時

  • なめらかで薄味のものを選ぶ。(ポタージュスープ、あんかけ料理など)
  • 刺激物、味の濃いもの、硬いものは避ける。(刺激物とは唐辛子、しょうが、酸味の強いものなど)
  • 食べ物の温度は人肌程度、冷まして食べる。
  • 飲み物はストローで飲むと痛みを感じにくい場合があります。

飲みこみにくさがある時

  • なめらかで飲みこみやすい料理を選ぶ。
  • 病状によってはミキサーを利用し、ペースト状にすると食べやすくなる場合があります。
  • ジュースやお茶にトロミをつける場合は、とろみ調整食品を使うと便利です。
  • 食事が十分にとれない場合はゼリータイプの栄養補助食品もおすすめです。

味覚変化がある時

★味を感じにくい時

  • だしのうま味をきかせる。
  • 油脂のコクをきかせる。
  • 濃いめの味にしたり、香辛料や酸味でアクセントをつける。
  • 人肌の温度にする。(味を感じやすい)

★甘みを強く感じる時

  • 砂糖やみりんを料理に使用しない。
  • 酢の物、レモンやゆずなどの酸味、スパイスを利用する。

★苦みや金属味を感じる時

  • うま味のきいた汁物を試す。
  • ガムやキャラメルで口直しをする。

 

〈亜鉛不足に注意〉
亜鉛が不足すると味覚に変化が出る場合があります。亜鉛を多く含む食品をとるよう心がけましょう。

においに過敏な時

  • においの強い食べ物を控える。(ニンニク、ニラ、春菊など)
  • 冷やして食べる。
  • シンプルな味付けにする。
  • 台所の換気、調理の時短。(レトルト食品や冷凍食品、総菜など利用する)
  • 水分の多い果物や野菜は食べやすい。

下痢ぎみの時

  • 下痢で失われるミネラルと水分は経口補水液を利用し、こまめに少量ずつ飲む。
  • 食事は穀類をよく加熱した、お粥やうどんなど、消化の良い塩味のある料理がおすすめです。

 

〈避けた方が良い食品〉
アルコール、カフェイン、脂肪分の多い料理、食物繊維の多い食品、酸味や刺激物、冷たいものなど。

便秘ぎみの時

  • 乳酸菌、適度な食物繊維をとる。(※鎮痛剤による便秘や、消化管の運動機能の低下による便秘の場合は、食物繊維のとりすぎは腸閉塞の原因にもなるため注意が必要です。)
  • 十分な水分補給をする。
  • 適度な運動を行い、腸の動きをうながす。
  • 適量の油脂をとり、便をやわらかくする。

1回の食事で少ししか食べられない、そんな時

  • 食事回数を増やす

朝昼夕と2回から3回の補食

(おにぎり、パン、ヨーグルト、果物など)

  • 料理の工夫でカロリーアップ

乳製品や脂質を料理にとり入れる。
・乳製品(グラタン、クリームシチュー、ポタージュなど)
・脂質

  1. 油料理(揚げ物・炒め物)
  2. ナッツ・胡麻(胡麻和え・クルミ和え・胡麻豆腐)
  3. ドレッシング、オリーブオイル、ごま油の利用
  • 栄養補助食品を利用する

少量で高栄養な食品で効率よく栄養補給
ゼリータイプ、ドリンクタイプ
ビスケットタイプ

基本的な食事のとり方

  • 1日3食を規則的に
  • 主食・主菜・副菜をそろえバランスよく
  • ゆっくりよく噛んで腹8分目
  • 乳製品や果物も適量とって
  • 塩分は控えめに
  • 楽しく食べましょう!